コンクールボードより抜粋
『壁は全部、漆喰にして下さい』
お仕事の過程で匂いに大変敏感になられたお施主様の第一声でした。私たちは使用する材料を徹底的に吟味して、自然素材の持つ本来の力をありのまま引き出すことを本案件の最大の眼目とし、設計にあたりました。
- 循環型社会の形成を目指し、構造材は山口県産材を使用。 優良県産木材利用住宅の建築促進助成制度を利用しました。そのほか家具や建具などは全て無垢材により仕上げました。壁面は竹小舞、土塗り、漆喰仕上げ。
- 漆喰の調湿性能が最大限発揮される日本の伝統的な知恵です。
- 塗料は柿渋、弁柄、荏油、亜麻仁油、桐油。用途・樹種に合わせて複雑に調合しました。
全ての居室が南面し、心地良い風が抜けるように、各居室を段違いに配置しました。
それにより生まれた屋根の軽快でリズミカルな様子は、日本建築にありがちな重厚感を軽減しています。
屋根材は長期メンテナンスに優れたオールステンレスを採用します。
あえて玄関を隠す事で、玄関までのわずかな道程が訪れる人の期待感を高める、そんな演出を施しました。
南側の軒を2メートル延ばすことで、夏の日照をコントロール。抜群の効果を生みました。
熟練した大工たちが存分に木と対話し、思いを込めて育んだ「自然の匂いのする家」。
日本建築の伝統技術と瀬戸内の気候風土に合わせた本計画が、住まう人の快適と末永い健康の礎となることを願っています。
『一期一会』
- 建築に従事する者として、お客様との良き出会いこそ最高の喜びといえます。
- 材料の要望だけで「後はお任せ」と言って信頼して下さったお施主様の気風の良さには感服いたしました。このご縁に感謝いたします。
『建築の公共性を、こう考えます』
- 自由経済における自由な消費によって成立する建築。
- しかしその国の、その土地の「景観形成という公共性を、おざなりにする計画であってはなりません。
- 「これが私たちの国、日本です。そしてこれが私の住む山口県です。」と、胸を張って紹介できる、
- そんな景観づくりもまた、私たち建築士の使命だと考えます。